元気な東大阪の町工場探訪記

先日、横浜から大阪に出張する機会がありました。
その時、特に東大阪で色々と町工場を見学させて頂けたので、今回はそのリポートです。

株式会社クリエイト築島

最初はアクリル製品の株式会社クリエイト築島さん
http://tsukijima.jp/

花や鍵が宙に浮いてる!?
どうやって作るの?
アクリルの樹脂ってどうやってかためてるのか?
アルミ・亜鉛ダイカスト一筋だった自分には、樹脂の世界は全くの門外漢。
物凄く興味が出てしまったため、最初に訪れました。

Twitterでは交流していたのですが、実は初対面。
ですが温かく迎えて頂き、とても丁寧に教えて頂きました。

基本的にはアクリルの板や棒をまず素材として用意し、それを切断したりして形を整え、製品化するそうです。
もちろん一つ一つでやることもできますが、コスト・手間を考えると写真のような板がベストなんだそうです。

アクリル板

そして透明な製品の中に品物が浮いて入っているように見える、摩訶不思議な製品。

アクリル製品

アクリル樹脂と中に封じ込めたいものと、それぞれの入れるタイミング、気を使うところ。
このMOON PAGEとある作品なんて、すごい手間がかかってると。
でもだからこそできるこのファンタジーな世界観。
いわゆる量産品では不可能な製品です。
ついうっとりみとれてしまいました。
アクリルの世界も実に面白いですね!

そしてこの手間のかかる仕事を淡々とこなすクリエイト築島さん、職人技を感じました。

MACHICOCOマチココ

次に訪れたのはMACHICOCOマチココさん
https://www.machicoco.co.jp/
製造業専門の企画・アイデアメーカーです。
様々な企業の製品化のお手伝いや、ワークショップ、クラウドファンディングやSNSなども積極的に活用しモノづくりの楽しさを発信されてます。

実は自分が最初に大高製作所としてSNSを始めたばかりで右往左往しているとき。
このマチココさんの町工場を応援するクラウドファンディングを知り、一口協力させて頂いた事が交流のスタートでした。
そこで町工場って、モノづくりって楽しいよね、と。

先に一度会って話はしていたのですが、訪問は初めてです。
中は・・・夢の世界ですね(笑)

ミニ展示会

3Dプリンターからショットブラスト、卓上旋盤からケトバシまで!
そして他の町工場さんの製品がズラッと並んだその様はミニ展示会です。
書初めもそのまま貼りだしてあって、楽しい雰囲気があふれんばかりです(笑)

ケトバシ

そのマチココの代表の戸屋さん。
とんでもないビジョンをたくさん持ってます!

象徴的に感じたのが
ものを作るのは楽しいけど、それがどうやって組立られているのか?
それを知るために今度、家電製品を全部バラバラにするイベントをやろうか。と。
・・・あっ、先に言っちゃっていいのかな、いいですよね?(笑)

そうですよね、普通は壊さないように大事にする製品を、バラバラにする背徳感。
昔はラジオとかを分解する経験をした方もいると思います。
そこで感じるものは、子供も大人も楽しくないわけがありません。
モノづくりの面白さを探求するために時間軸を逆に見る発想はびっくりですよ!

そんな話をたぶん3時間ぐらい続きました。
素晴らしいアイデアの持ち主の方です。

マチココ

株式会社盛光SCM

そして、もう一件が
株式会社盛光SCM
https://www.seiko-scm.co.jp/

自社製品の照明器具と、板金、そしてダイカストの金型も手掛けている会社です。

実はこの盛光SCMさん、以前に営業の方が横浜の弊社に訪れて下さいました。
その時に、同じダイカスト金型メーカーとして協力しませんか、とお話しを頂きました。
ライバルでなく、協力し合う仲間としてです。
こんなうれしいことはありません。
そこで訪れたのが、今回の一番の目的でした。

そしてこれまた偶然なのですが、訪問したその日は「こーばへ行こう行こう!」というイベントの開催日で、大勢の方々が見学されていました。

実演

盛光SCMさんの代表の方は女性です。
先ほどのマチココさんもですが、もはや製造業で女性経営者というのも珍しい時代ではなくなってきました。
当然、女性従業員の方も多くいらっしゃいました。
工場内はイベントとはいえ、開放的でおよそ町工場らしくない雰囲気もありました。

その一つはライブでしょうか!
3人のユニットで、Un-nitさんというバンドの素敵なジャズのライブも楽しめました!
ちなみにステージ台はパレット(笑)

その後、事務所でガッツリと金型の話をしました。
その休憩で手作りケーキも頂いちゃいました!
おいしい!
極めつけはこのお皿は絞りで成形されたものです。
かっこいい!

絞り皿

町工場ってとかく薄暗い・油くさい・危ないというイメージが先行しがちですが、中には素晴らしい製品や技術があるわけです。
これを近所の方々に知ってもらう。
すごく大事なことですよね。
このイベントには子供達も大勢きていました。
そして様々なワークショップを体験していました。
この中から将来、興味を持ってモノづくりの担い手として優秀なエンジニアが育ってくれるに違いありません。

製品

展示ルームには、絞りで作った板で構成された個性ある緑のあるオリジナル照明。
そしてウチではとても作れない、1000t越えの鋳造機で作るダイカスト製品も並んでいました。
盛光SCMさん、活気もあり難しい製品もあり、イベントも拝見できて大変貴重な時間を過ごせました。

ちなみに。
その後の夜は夜で宿泊のホテルで「ものづくりドットコム」のオンラインイベントに参加しました。
モノづくりに携わってこられた方が大勢参加されました。
でも本当は道頓堀の夜を堪能したかったですが(笑)非常事態宣言中です。残念!

qecompass・細川哲夫さん

その中で、またたくさんの方々とお話しをさせて頂きました。

特にその後、この時の話をブログにも紹介していただいた細川哲夫さん。

qecompass
http://qecompass.com/page3/bid-513684

大手メーカーを渡り歩き、MOやHDDなどディスクメディアの開発に携わってこられた方です。

この時の話で、大手の縦割りな硬直と中小の身軽さ。
逆に大手の規模の大きな仕事と中小の小さな仕事。
隣の芝生は青く見える、なのかもしれません。
しかし、お互いにその長所と短所を見極めることができれば、より柔軟な仕事の進め方ができるようにする事ができる。
いや、しなければならなくならない時代が来た、と感じることができました。

あと一つ、この時チャットで私にコンタクトを取ってくれた方がいたのですが、自由のきくパソコンでなく、小さなタブレットでした。
なのでチャット窓はいちいち変更せねばならず、気が付いた時にはブレイクアウトルームも閉じられてわからなくなってしまいました。
申し訳ございません。
個人名だったのでこちらから検索も難しく、もしこの時お話し頂いた方、改めてご連絡いただけると幸いです。

モノづくりの魅力を改めて考える

基本的なモノづくりは便利な商品であること、が必須だとは思います。
しかし、モノがあふれる時代になりました。
昔のいわゆる三種の神器のような生活に必須なものも普通に買いそろえることもでき、特別な高嶺の花というわけではありません。
そして結果的に安値の競争に追い込まれて苦しんでもきました。

時代は変わり、少子高齢化で職人の担い手も減りました。
安かろう悪かろうだった外国製品だって粗悪品は減ってきました。

その中で生き残るには?
そのヒントを、今回東大阪を訪れたことで見えた気がします。

実はとても難しい職人技を当たり前に培ってきたこと。
そしてそれを一般の方々にはほとんど知られてこなかったこと。
自分達、町工場の仕事が実はプライドを持ってやれる仕事であること。
そうです、とても貴重な価値があるんです!

安く・早く・精度よく

これが魅力的で本当の意味で価値あるもであれば、ここまで町工場の数が減ってくることもなかったと思います。
当たり前と言われたことが実は当たり前でなかったんです。
語弊があるかもしれませんが、あえて強い言葉を使うなら
作れるのなら、あなた作ってごらんなさいよ、です。
お互いに尊重した相手であれば、無条件で安くとか無理な納期は言えないと思うんです。
それを薄氷を踏むかの如く、ギリギリの綱渡りで乗り切ってこれた。
それはとても、とても貴重な職人技で製品は作りだされていたからなんです。
ただ、職人側もそれを安売りしすぎていた。
職人技って、安くして作るものだと勝手に勘違いしていた。

だからって、ただちに単価を上げるのは当然厳しいです。
しかし、こういうストーリーで、こういう風に一生懸命に作ってるんだよ。
それを知った人たちはどう思うでしょうか?
あぁ、そんなに手間暇かけて、愛情込めて作ってるんだ、と。
まさしくフェアトレードです。
カカオ豆やコーヒー豆などはそういう動きもでてきました。
その価値が認められれば、当然対価だって変わるはずです。
そこで初めて次世代の優秀な職人も育つと思うんです。
これから必要なことは、継続すること。
安心できるよう次世代につなぐことだと思うんです。

そのためには、知ってもらわねばなりません。
今後は、より尖ってモノづくりの魅力があふれるようなところが、当然働く職人も楽しいですし、そこからいい仕事ができますし、仕事も増えると思います。
すると、今度はまたより一層、自分達の技術も高めよう、となるのではないでしょうか。

自虐的になる必要なんて一つもないんですよね。

工場の中に閉じこもっていると、まさに井の中の蛙。
逆に自分達の価値だって忘れてしまいます。
ワークショップを経験してる人達の笑顔が、何よりもそれを物語っていました。

モノづくりは楽しいと。

今回はその再確認をすることができました。
そして本当は、他にももっと見てみたい工場があったのですが、さすがに時間がたりませんでした。
また機会を作って遊びにいきたいと思います。
そして、逆に弊社に遊びに来てくれたらまた嬉しいです。

改めて。
今回お世話になった皆様、ありがとうございました。